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大規模購買システムをFastAPPにより構築し
自社およびパートナー企業の働き方改革の推進に貢献

SCSK株式会社
SCSK株式会社

設立:1969年10月
所在地:東京都江東区豊洲3-2-20
事業内容:システム開発からI Tインフラ構築、ITマネジメント、BPO(Business Process Outsourcing)、ITハード・ソフト販売まで。ビジネスに求められるすべてのITサービスを、フルラインアップでご提供します。
URL:http://www.scsk.jp/

PDF(1.9MB)
約700社のパートナー企業、社内外約3,000名のユーザーが利用する大規模購買システム
導入のポイント
  • 約700社のパートナー企業、社内外約3,000名のユーザーが利用する大規模購買システムをFastAPP上に構築
  • 約1年6カ月のプロジェクトを通じてFastAPPを用いた全社標準の最適な開発手法を確立
  • 業務効率化やコスト削減を実現し、働き方改革に貢献

住友商事グループのITベンダーとしてシステム開発などを手がけるSCSKでは、700社近いパートナー企業と協力して各種案件に当たっていますが、FastAPPを用いて業務委託に関するやりとりおよび情報共有を行う購買システムを開発。FastAPPによる開発は社内で初めてだったこともあり難航したものの、試行錯誤ののちに最適な開発手法を確立。大規模な基幹業務アプリケーションを短期間で構築を完了させました。この新たな購買システムにより、これまで紙ベースで行っていた発注業務が大幅に効率化されるとともに、パートナー企業との関係性の強化が実現。開発のノウハウも社内に蓄積され、基盤利用による開発体制が整いました。

  • 津吹 芳夫

    SCSK株式会社
    購買・業務グループ
    購買業務部
    部長
    津吹 芳夫

  • 阿部 義則

    SCSK株式会社
    情報システム・業務改革グループ
    コーポレートシステム部
    副部長
    阿部 義則

業務負荷の軽減とBPRの観点から購買システムの構築を検討

 システム開発からインフラ構築、ITマネジメント、BPO、ハードウェア/ソフトウェアの販売まで、さまざまな事業を展開しているSCSK。受注した業務の一部を再委託する約700社のパートナー企業との連携強化は、質の高いシステムを作る上で必要不可欠です。
しかしこれまでは、見積依頼、発注、発注請け確認、計上、支払いなどの各種手続きに基幹システムを使用していたものの、紙ベースの手作業も多く残っており、担当者にとって大きな負担になっていました。この点について購買・業務グループ購買業務部 部長の津吹 芳夫は

「ピーク時になると担当者は見積手続きや発注書の作成・発送に忙殺されていました。昨今はパートナー企業への発注件数が年々増加しており、業務をEDIベースのシステムに移行したいという声が出てきたのも当然でした」

と振り返ります。
 一方で、BPR(業務改革)の観点からは業務プロセスの標準化が求められていました。
SCSKは2社が合併し誕生した会社ですが、それゆえ業務プロセスが混在しており、内部統制やコンプライアンスの面で課題がありました。そこで、契約条件などのルールを統一、その後システム化することにしたのです。

開発スピードと自由度の高さを評価しFastAPPによる基盤利用開発に挑戦

 購買システムの導入を決めた後、パッケージ製品やスクラッチ開発などさまざまな方法を検討しました。

「パッケージ製品の導入も考えたのですが、それらの多くが製造業や流通業向けのもので、ITベンダーの業務委託に適していません。そこで、自社で開発できないかと考えたのです」(津吹)

 購買業務部からの依頼を受けたコーポレートシステム部は、当時まだリリースされて間もない自社のマネージドPaaSサービス「FastAPP」を活用して開発することを決断します。そのねらいについて情報システム・業務改革グループ コーポレートシステム部 副部長の阿部義則は

「従来のウォーターフォール型開発の場合、企画からリリースまで長期の時間がかかるのが一般的です。しかし、毎年のように行われる法改正に対応するためには、迅速な開発が行えなくてはなりません。そこで、プログラムレスで短期間の開発が可能なFastAPPを活用し、プロトタイプを使いながら繰り返し修正していくアジャイル的な開発に挑戦することにしたのです」

と説明します。

エンドユーザーが使いやすいシステムを実現パートナー企業からも高い評価

 SCSKでは、実際にシステムを使う現場の人間も交えた要件定義ののち、2014年7月から構築に着手しました。2015年11月にはベータ版が稼働。2016年2月から本稼働を開始しています。今回の構築に要した期間は約1年6カ月ですが、プロジェクトは想定以上に難航したといいます。

「FastAPPで作った実際の画面を見ながら要件を検討したのですが、これまでバラバラに行われていた細かい業務フローを統合するのに時間がかかりました。とはいえ、ここでしっかりと詰められたのは結果的に良かったのかもしれません」(津吹)

 慣れないFastAPPによる開発も当初は混乱の原因となりました。プロジェクトはコーポレートシステム部に加え、オフショアチームも参画して進められました。ところが、FastAPPのノンプログラミングで部品を組み合わせて行う開発が初めてということもあり、これまでのスクラッチで作る感覚を払拭することが難しかったといいます。

エンドユーザーが使いやすいシステムを実現パートナー企業からも高い評価

 また、プロトタイプ開発は遠隔地で作業するオフショアチームとの意思疎通が難しく、仕様変更のたびに発生するドキュメントの作成や変更管理が追いつかなかったといいます。そこで、途中でオフショア開発との役割分担を変更し、社内チームとの開発工程間での成果物と体制を再編成。お互いのコミュニケーションを深めながら開発を進めました。

「当時はFastAPPの使い方がよくわかっておらず、勉強しながら開発を進めたのが実情です。また従来の開発プロセスをどう変更していくのが良いか試行錯誤が続きました。しかしながら、さまざまなトラブルを乗り越えたおかげで、多くのノウハウが蓄積できました」(阿部)

 こうして完成した購買システムですが、現場の要望が反映された使い勝手のいいものに仕上がりました。また、テスト工程での仕様の微調整も素早くできたといいます。

「実際に操作画面を見ながら確認できたので、開発の際にはイメージを伝えやすかったですね。ユーザーからの反応は上々で、パートナー企業からも他社のシステムより使いやすい、EDIのデータ送信時にメールで通知する機能が便利といった賞賛の声が届いています」(津吹)

大規模購買システムの基盤としても十分な安定性を実現

 「SE Link」と名付けられた新システムは、販売管理や会計管理を扱う基幹システムとシームレスに連携しています。ユーザーはパートナー企業約700社の担当者約1,000名に、SCSKの担当者約2,000名を加えた約3,000名。稼働開始に合わせて社内に専用のヘルプデスクを設置し、詳細なマニュアルも用意したことで、みなスムーズに使いこなせるようになったといいます。
「SE Link」の稼働により、SCSKとパートナー企業がEDIで見積や発注についてやりとりするようになった結果、紙の書類は必要なくなり、業務を大幅に効率化。および紙代やその保管料、郵送費、印紙代などのコスト削減が実現しました。

「ピーク時の作業工数が減り、現場の残業時間も大幅に削減されました。パートナー企業にとっても業務の削減にもつながり、お互いの働き方改革に貢献できたのも大きな成果です」(津吹)

 新システムは堅牢性が高く、本稼働から2年がたった現在も大きなトラブルは一度も起きていません。

「FastAPPは大規模購買システムの基盤としても十分な安定性を実現していることが証明できました。ユーザー管理やセキュリティ機能など、FastAPPの標準装備を活用することで、開発期間を短縮できるばかりでなく、メンテナンス性が向上することもメリットですね」(阿部)

コミュニケーション機能(テンプレート)を活用しパートナー企業との絆を強化

 SCSKでは今後、ユーザーの要望を聞きながら、定期的にシステムをブラッシュアップしていく予定です。また、FastAPPで開発したアドオンについても、可能な限り最新版で提供されている標準の機能に置き換え、メンテナンス性のさらなる向上を図っていきます。

「現在、購買システムの対象業務は見積と発注だけですが、近い将来、納品関係書類や請求書を電子化し、納品から支払いまで業務範囲を拡大したいと考えています。また、FastAPPのコミュニケーション機能を使い、パートナー企業と各種情報やコンテンツを共有、絆を深めていきたいですね」(津吹)

 今回のプロジェクトは、SCSK社内からも注目度が高く、その他の業務システムに対しても最適な環境があればFastAPPを適宜適用し、開発生産性を高めていくことを検討しています。

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